技能職紹介 「板金屋(ばんきんや)」
金属の芸術家 板金屋さん
板金屋さんってどんなしごと?
板金屋さんは薄く平らに延ばした金属の板を切ったり叩いたり曲げたりして加工する職人です。
板金はいろいろなものに使われており、家の屋根、神社やお寺の飾り、工場の配管、 自動車のボディや飛行機の翼などそれぞれ職人も専門的に分かれていますが、 ここでは建築板金について説明します。
建築での板金屋さんのしごとは家の屋根作りが中心となります。 今では工場で大量生産されている屋根の部品を使っていますが、 かつては金属屋根のひとつひとつを板金屋さんが作っていました。 とはいってもその屋根を設置するには現在でも職人の知識と技術が必要になります。 また、雨どいは現在は塩化ビニールのものが主流ですが、屋根全体を作る板金屋さんのしごとのひとつです。
板金屋さんの技 その1
★工場での板金
工場ではたくさんのパイプが使われています。 空気を通すためのダクトや液体もしくは固形物を流すパイプなど用途はさまざまです。 パイプでの板金屋さんの腕の見せ所はパイプの曲がり角にあります。 手作りのパイプは大量生産されたものより優れていて、スムーズに空気やものが流れるようになっています。 それを知っている工場の人は手作りのものを好んで使い、工場の効率を上げるのに一役買っています。
- 左の型に切った金属の板を丸く曲げ、6個つなげて曲がり角を作ります。
板金屋さんの技 その2
★家屋での板金
屋根を金属で作っている場合は板金屋さんのしごとです。 材料は亜鉛めっきされた鋼板や銅板などさまざまで、形も瓦に近いものもあります。 大量生産されている屋根の材料を並べるだけとあなどってはいけません。 屋根の広さによって細かく計算し、何千枚もの金属板を美しく頑丈に取り付けるには職人の技術が必要です。
- ↑屋根の材料となる金属板。
板金屋さんの技 その3
★神社・お寺での板金
神社やお寺で緑色の屋根が使われているのを見たことがあるでしょうか。 あれは銅でできていて、元は新品の10円玉の色をしていました。 その銅が錆びて青緑色になっているもので、とても趣があります。
またそれだけでなく、注意深く見ると神社やお寺の建物の柱や梁にところどころ金属で 飾りがつけられているのがわかります。これも板金屋さんのしごとです。 特に鬼板と呼ばれる屋根飾りは大変難しいものです。 デザインは昔の職人から代々受け継がれているものや、現代の職人がデザインしたものもあり、 技術を競っています。
- ↑神社の屋根と飾りに注目!
- ↑完成した神社の飾り。
- uarr;製作途中の鬼板。
板金屋さんの道具
金属の板を切る・叩く・曲げる・くっつけるための道具を使います。 実は道具は昔からあまり変化がありませんが、それを使う技術が職人によって洗練されてきているのです。
- ↑いろいろな形のカナヅチ。
- ↑金属の板を切る機械。
- ↑たくさんのタガネ。カナヅチで
- 打って板に模様をつけます。↑
- ↑金属をつなげるのに使うコテ
- ↑電気式のコテ
板金屋さんの歴史
広く金属加工として見てみると、それこそ数千年の歴史があります。 板金という薄い金属の板を作って加工することだけを見ると、16世紀ごろに始まったとされています。
日本ではかんざしの飾りや小判などを作っていた職人が板金屋さんのもととされています。 そこから枝分かれしていき、一昔前はブリキ屋さんと言われて鍋ややかんなどを作ったり修理したりしていました。 それから時代とともにそういった製作をするしごとは姿を消していき、 家屋の屋根・外壁へ金属板を取り付けるしごとをするようになりました。
ただ、昔の技術をなくさないためにも、板金業界は講習会や板金技術の試験を開催して技能の継承・保存を行っています。
- ↑検定課題のじょうろの口
- 工業部品。↑
板金屋さんの魅力
現役の職人さんに仕事の面白さを聞きました!
★株式会社 別府板金工業所 別府さん
全てのものづくり職人に共通することだと思いますが、単純にものを作る楽しさがあります。 現在伝わっていない先人の技術を見て頭を悩ませ、あるときそのやり方を発見したときは感動します。
また、神社やお寺には建築に携わった人の名前が奉納され、これからもずっと残っていくものなので、 自分の技術の証をたくさんの人に見てもらえるのが嬉しいです。 私もいろいろな神社やお寺を見て勉強しているので、たくさんの若い職人に見てもらいたいです。
板金屋さんの歴史
板金の学校として職業能力開発校があります。もしくは板金の会社に入って修行します。
一人前になるには10年くらいかかるといいます。 また、鬼板をしっかり作れるようになるには20年もかかるそうです。 板金を面白いと思い、板金をやりたいと思う気持ちが強い人が向いているそうです。 また、負けん気の強い人はどんどんうまくなっていくとのことです。
先人の残した遺産ともいえる技術が少なくなっています。 その技術をなくさないために、なによりも「やる気」のある人がなって欲しい職業です。
- ↑明治から使われている“デザイン集”
- ↑別府さんのおじいさんの作品。
素人にはわからない、
“神様”といわれたおじいさんの
技術の真髄がこめられているそうです。