技能職紹介 「塗装屋」
ペンキの達人 塗装屋さん
塗装屋さんってどんなしごと?
おもな仕事は住宅やビルなどの建築物のカベや屋根などの塗装です。
ハケやローラー、スプレーなどさまざまな道具を使用して作業を進めていきます。建築の塗装には見ばえを良くするためだけでなく雨や湿気や日光などから建物を守る役割もあります。
最近は新たな塗料がどんどん開発されているので、技術だけでなく素材や塗料の幅広い知識が必要とされています。
さまざまな色の塗料を混ぜ合わせて色を作る調色ができるようになって、一人前といえるため色彩感覚も必要となってきます。
塗装屋さんの技
1 塗装する前に養生(周りを汚さないようにビニールで覆う作業)をします。
2 この養生のテープをまっすぐ貼るだけでも初心者には難しいといいます。
3 窓にも養生をします。養生と下地処理にしっかり時間を使います。
4 下地の調整をします。へこみキズなどをパテで埋めます。
5 やすりをかけて塗装面を平らにします。
6 塗装の前には塗料をよくかき混ぜます。色の成分が缶の中で分離してしまうためです。
7 ローラーバケを利用して塗装する場合、まず塗料をローラーにまんべんなく含ませます。
8 塗料が均一につくように、少し斜めにローラーを動かして塗り広げていきます。
9 ハケは塗料で固まらないように一回使ったらシンナーにつけておきます。もう一度使う場合は塗料につけて、ハケになじませてから塗ります。
10 ハケを一定方向にすばやく塗って仕上げます。
※塗装の現場においては養生と下地処理が何より大事だそうです。 塗装にかける時間の倍ぐらい養生に時間をかけるそうですよ。 |
塗装屋さんの道具
ローラーバケ。広い面を塗るときに。
スジカイバケ。他にも平バケやズンドウバケなどさまざまな種類があります。
いろんな種類の塗料。風呂場の天井に使うものなど様々です。
定板。パテを盛ってヘラで塗りつけます。
腰袋。こちらに道具を入れて身に付けます。
養生テープ。
塗装屋さんの歴史
古代から塗るという作業は、しぶ屋、ぬし屋、提灯屋などが行い鎌倉武家文化で開花してきました。
塗装発祥については諸説あるものの、現在主に塗装に使われるペンキを日本ではじめて塗ったのは江戸の渋塗り職人(渋塗りとは、柿渋で塗ること)の町田辰五郎さんといわれています。
1854年にペリーが横浜の浦賀に2度目の来航をした時で、横浜談判所(交渉をする応接所)の外側のペンキ塗りがはじめてといわれています。
ペンキが知られていなかったような時代なので、辰五郎さんは本牧沖に停泊していた米船「アンダリア号」でペンキと油を入手し、なんとか塗装工事を終わらせる事が出来ました。
これが日本の近代塗装業のはじまりといわれています。
塗装屋さんの魅力
現役の職人さんに仕事の面白さを聞きました!
★この道35年! 地葉不二夫さん
暑い中作業をする事もあるので大変といえば大変ですが、やはり塗装をしてきれいになるのが楽しいですよね。古びていたり、汚れていた部屋がきれいになるのは嬉しいものです。
珍しい物を塗ることもあって、舟の煙突を塗ったこともあるんですよ。足場を組めないので簡易的なゴンドラ(板にロープをつけたようなもの)に乗って塗りました。
あと面白かったのは大きな貨物船の内側をクレーン車にのって吹き付けで塗装したことです。壁が4~50mもある船だったんですよ。
船を港につけておくとそれだけでお金がかかるという事で貨物を降ろしたらその日の夜から早速作業を始めました。次の朝までに作業を終わらせないと船がそのまま出航していってしまうということで、何がなんでも塗り終わらねばという気持ちで終わらせましたよ(笑)。
そういった日常にはない珍しい体験が出来る事も魅力といえば魅力でしょうか。
★生形塗装(有) 代表理事 生形一治さん
お客様に「塗装をしてきれいになったね。」と言われるとすごく嬉しいですね。
昔、風水が流行った時に縁起がいいという事で外壁に黄色い塗装をした家を、今度は新しくピンクに塗り替えた事もありました。
お客様が嬉しそうに「離れて住んでいる息子が帰ってきても色が違っちゃってわからないかもね」と言われましたよ。
塗り替える事自体も楽しいですし、お客さんとこういったやりとりが出来るのも楽しみの一つですね。
左 生形さん、右 地葉さん
塗装屋さんになるには?
専門学校で技術を学んでから塗装会社に就職するか、塗装会社に勤務しながら職業訓練校で勉強することも可能です。
塗装業には「二級塗装技能士」や「一級塗装技能士」の資格があります。何年か実務経験を経てから受験する資格を得ることが出来ます。
最近では色を塗るだけでなく抗菌や防水などの処理をして塗装をするなど、素材や塗料に対する知識や、技術力が求められています。
様々な色の塗料を混ぜ合わせて色を作る調色が出来るようになることが必要なため、色彩感覚も必要となります。
一人前になるには10年はかかり、コツコツ努力できる人がむいているそうです。