技能職紹介 「左官屋(さかんや)」
土と砂の専門家 左官屋さん
左官屋さんってどんなしごと?
建物の壁や床に、土や砂などいろいろな材料を混ぜ合わせたものを塗ってしあげる職人です。 土には色や硬さなどいろいろな種類があるため、土に関する知識が豊富です。
現在では大きく分けて一戸建てなどの家を専門にする左官屋さんと、 マンションやビルを専門にする左官屋さんの二つに分かれています。
一戸建てなどの家を専門にする左官屋さんを「町場」といい、 マンションやビルを専門にする左官屋さんを「野丁場」といいます。
左官屋さんの技 その1
★町場
一戸建ての場合、室内の壁や外壁に職人の技を見ることができます。 部屋によって「珪藻土」や「漆喰」など壁に塗る材料を変え、くらしやすい環境を作っています。 また、見た目の美しさも重要です。
【珪藻土】植物性プランクトン(藻)が化石化したもの。七輪などに使われている。
【漆喰】防水・防湿に優れているので、日本の気候に適した材料。
- ↑珪藻土の壁
- ↑漆喰の壁
- ↑でこぼこ模様の外壁
左官屋さんの技 その2
★野丁場
マンションやビルの場合、すべての場所の下地作りをしています。
左官屋さんの腕がよくないと、そのあとの内装から階段の段差の高さ、タイルの数まで合わなくなってしまいます。 町場と違って完成後に仕事の結果が表から見えることはあまりありませんが、とても責任重大な仕事です。 そのため、他の職人さんから頼りにされていて、建設現場の中心です。
- ↑下地を塗ったあと
- ↑階段もきれいに
- ↑天井も塗ります
左官屋さんの技 その3
左官屋さんは主にコテという道具を使います。 コテを使って手作業で壁や床、天井にも左官材を塗っていきます。 それでは仕事のようすを見てみましょう。
- ↑この道40年以上の佐藤さん。
- 手の動きが速すぎてうまく写真がとれませんでした。
- ↑マンションのベランダです。
このようにふちをまっすぐに作るのも手作業です。
- ↑町場の室内の壁です。この
ような模様をつけるために…
- ↑でこぼこのスポンジで
線を入れていきます。
左官屋さんの道具
左官屋さんの使うコテはたくさんの種類があり、1000種類以上あるといわれています。 それを土を塗る場所によって使い分けます。そのほかにも職人が工夫していろいろな道具を使います。
- ↑左官屋さんの命、コテとコテ板です。
- ↑たくさんの種類のコテ。
- ↑ディスクグラインダー
コテで塗る前に壁をけずって平らにする機械。
左官屋さんの歴史
左官という名前は古く奈良時代から(1300年くらい前)あるといわれています。 しかし左官の起源としてはそれよりもさらに昔、縄文時代にまでさかのぼります。 粘土をこねて丸くし、たくさん積み重ねて壁にしたのが左官屋さんの仕事の始まりです。
★横浜の左官屋さん
横浜が開港し、明治時代に西洋の文化が入ってくると、左官屋さんの仕事も大きく変わりました。 西洋からレンガやタイルが入ってくると、その技術も取り入れて左官屋さんは仕事をするようになります。 その後、レンガ・タイル・吹付は左官屋さんから別れて専門の職人になっていきましたが、 もとはすべて左官屋さんがやっていました。
左官屋さんの魅力
現役の左官屋さんに仕事の面白さを聞きました!
- この道43年! 熊澤さん。
★町場 熊澤左官店 熊澤さん
天然素材の壁は日本の気候風土に合い、体に優しいので、住んでみて初めてその良さがわかります。自分が壁を塗った家で暮らしている人から「壁にしてよかったよ」と言われるのがとてもうれしいです。
- 加賀さん(左)と渡辺さん(右)
★野丁場 野沢組 加賀さん・渡辺さん
壁がきれいにしあがったとき。若いときは先輩にほめられるととてもうれしかったです。また、現場のほかの職人さんたちからとてもたよりにされるので、やりがいがあります。大きな建物だと、完成したあとみんなに自慢できます(笑)
左官屋さんになるには?
一番の近道は左官屋さんの仕事に興味を持って、直接左官屋さんの会社に入ることです。
昔は親方からコテを持つのを許されるのに3~5年かかると言われていましたが、最近ではそういうことはないようです。 ただ、仕事がうまくできるようになるには10年かかると言われています。 仕事がうまくできるようになって、経験を積めばつむほど面白さがわかってくるそうです。
伝統的な日本の左官屋さんは外国に比べてレベルが高く、その技術を海外から学びに来る人もいます。 しかし国内でもその技術を持った職人は少なくなってきています。 現在の左官屋さんは1000年以上の長い歴史で作られた技術を受け継いでいるのです。