技能職紹介 「鍼灸マッサージ師」
手の技が光る! 鍼灸(しんきゅう)マッサージ師さん
鍼灸マッサージ師さんってどんなしごと?
鍼治療を行う「はり(鍼)師」、お灸での治療を行う「きゅう(灸)師」、 手を使って全身のマッサージを行う「あん摩マッサージ指圧師」の3つの資格を持つ人を鍼灸マッサージ師と呼びます。
皆さんがよく知る病院はヨーロッパが始まりの西洋医学といい、こちらはアジア(主に中国)から始まった東洋医学といいます。 その歴史は西洋医学よりはるかに長いとされています。
鍼師、灸師、あん摩マッサージ指圧師は免許が必要で、普通のお医者さんとそう変わりはありません。 基本的なお医者さんの知識に加え、漢方薬や経絡・経穴とよばれる人の体にあるツボの知識を持った施術者(治療師)です。
鍼(はり) | 金属製の細い針金を体に刺し、ツボを刺激することで人の自然治癒力を高めて病気を治す。 |
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灸(きゅう) | ツボにもぐさを置いて燃やすことで熱刺激を与え、自然治癒力を高めて病気を治す。 |
あん摩(ま)・マッサージ・指圧(しあつ) | 体をこすったり揉んだり指で押したりして症状を良くする。 あん摩は中国、マッサージはヨーロッパ、指圧は日本が発祥とされている。 |
鍼灸マッサージ師さんの技 その1
経絡(けいらく)・経穴(けいけつ)
経絡とは、人の体にある網の目のような連絡通路であり、その中をエネルギーがたえず流れて、人体の活動を支えているという考え方です。
この経絡がうまく流れてないと病気になったり、体調が悪くなったりするため、鍼灸マッサージ師さんは色々なやり方で経絡に刺激を与え、 流れを良くして体の調子を整えます。
全身に14の経絡のラインがあり、この経絡の上にある経穴、いわゆるツボと言われるものが361個もあります。 経穴には全て名前がついており、鍼灸マッサージ師さんはその名前を言っただけですぐにその場所がわかります。
経穴は体の内部につながっていて、刺激を与えると胃が良くなるツボや、目が良くなるツボなどがあります。 逆に、胃が悪い時にはそのツボが硬くなったり、おさえると痛くなったりすることがあります。
- 経絡・経穴の図。動物にも同じように経絡・経穴があります。
鍼灸マッサージ師さんの技 その2
鍼やお灸で治療をする前に、体のどこが悪いのかを判断します。 経穴をさわってみて患者さんがどう感じるかを調べたり、血の流れ(脈)の速さや遅さ、硬さや柔らかさを手で感じとったりします。 またはストレッチをしてどこが痛いかを聞いたりして、鍼灸マッサージの長い歴史と、長年の経験からどこが悪いかを判断します。
体のどこかが痛い場合、原因は全く別の場所にあることがあります。 たとえば手の指がしびれている場合は首や肩に原因があったり、目が疲れて肩がこったりするようなことです。 鍼灸マッサージ師さんはこの原因を経絡や経穴でつきとめ、そこを治療します。
- 脈の微妙な違いを
指で感じ取ります。
- 経穴をさわって
感じ方をききます。
- ストレッチをして
痛い場所をききます。
鍼灸マッサージ師さんの技 その3
鍼(はり)
一般的に、0.12mmから0.25mmのとても細い針金のようなものを使います。管の中に入れた鍼を経穴にあて、 後ろをトントンと叩いて皮ふに刺します。刺す深さは1mmほどですが、特に悪い場所だともっと深く刺す場合があります。
刺すといっても注射の針よりもっと細いものなので、ほとんど刺されていることも感じませんし、血も出ません。
- たくさん刺されていても、
本人はほとんど何も感じません。
- 特に悪い場所には深く刺します。
灸(きゅう)
体にもぐさを置いて火をつけ、その熱で経穴を刺激して治療します。もぐさはお米の半分くらいの大きさにします。 鍼と違ってお灸は熱く感じます。昔はわざとやけどをさせることで経穴を刺激することもありましたが、 現在ではお灸のあとが残らないものが多く、温かくて気持ちのいい温度になっています。
- お線香で火をつけます。
体の上で火が燃えるのですから、
当然熱いわけです。
突然の病気の場合は鍼、長く続く病気の場合はお灸がいいと言われています。
鍼灸マッサージ師さんの技 その4
あん摩・マッサージ・指圧
手で体をなでる、押す、叩く、揉むなどをして治療する技術です。 皆さんも体をどこかにぶつけた時、痛い場所に手を当ててなでたりこすったりして痛みを和らげたりするかと思います。 その「手当て」を専門の技術として完成させたのがマッサージの技です。
あん摩は中国で作られ、一番古い歴史があります。ヨーロッパで作られたマッサージは、主に体をなでたりこすったりすることが多いです。 指圧はこの中では一番新しく、日本で作られました。字の通りに指でツボを押すことが多いです。
指や手のひらを使ってコリをほぐしていきます。 鍼灸マッサージ師さんは何気なくさわっているようでも、
とても気持ちいいポイントをついてきます。
鍼灸マッサージ師さんの道具
- 鍼治療で使う基本的な鍼。
最近は使い捨てのものもあります。
- 写真だとわかりにくいですが、こんなに
長い鍼もあります。約40cm。
- 中国の最も古い鍼の教科書にある、
九鍼という基本的な9種類の道具。
- もぐさとはヨモギの葉の裏の細かい毛を
集めて乾燥させたものです。高級なものは
薄黄色で火が付きやすいです。
- なんと言っても、鍼灸マッサージ師さんにとって、手が1番の道具です。敏感な感覚器官である手と指を使って、体の悪い部分を見つけ出します。
鍼灸マッサージ師さんの歴史
鍼・灸・あん摩は約3000年も昔の中国で始まりました。 最近テレビ等でよく聞く「未病(病気になりそうな体の状態)」という言葉もこの頃にはすでにありました。 鍼・灸・あん摩はその未病と病気を治す手段として発展していったのです。
日本に伝わったのは約1500年くらい前だとされています。 それから奈良時代には鍼師などの職業ができ、それ以降日本の医療の中心となっていきました。 鍼は日本独特の発展をし、江戸時代に杉山和一という人が考えた、管を使って鍼を刺す方法「管鍼法」は今でも広く使われています。
1970年代くらいまで、日本での鍼灸マッサージ師さんはその多くが目の不自由な方でした。 目が不自由な代わりに手先が敏感で、手で症状を読み取るのに向いているといった話もあります。
優れた外科のお医者さんの手術を「職人技」というように、 長年の経験と手の感触で症状を読み取る鍼灸マッサージ師さんは、まさに職人といえます。
鍼灸マッサージ師さんになるには?
「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」によって決められた資格を取得することで、鍼灸マッサージ師になることができます。
全国各地に3年制の専門学校があり、中には専門の大学まであります。そこに通って資格を取得するための勉強をします。
鍼灸マッサージの技術と知識を学ぶには、まず現代の基本的な医療の知識が必要になります。 そして、経絡などの東洋医学の知識をつけるために、世界最古の医学書である中国の「黄帝内経」などの本をたくさん読まなくてはいけません。 「黄帝内経」はなんと紀元前約200年頃に書かれたものです。
鍼灸マッサージ師さんは、大昔の知識と、そこから何千年もかけて発展していった歴史と技術をもって、治療をしています。