技能職紹介 「和裁士」
手縫いの芸術 和裁士さん
和裁士さんってどんなしごと?
日本の伝統衣装「和服」を仕立てるのが和裁士です。
反物と呼ばれる細長い1枚の生地から、色柄の配置などを考えて一針一針すべて手縫いで1枚の着物を完成させます。
着物はほとんど直線縫いのため、いかにまっすぐに縫えるかが重要です。
成人式、卒業式、結婚式には和服を着ることも多く、最近は若い人たちがゆかたを着ることもふえています。
手先の器用さだけでなく高価な反物をていねいにあつかわないといけないなど、繊細さも求められる仕事です。
和裁士さんの仕事場
和裁士さんはどのような職場で働いているのでしょうか。今回は横浜にある「山本きもの工房」さんにおじゃましました。
工房の外観
山本きもの工房代表の山本秀司さんです。
着物の材料であるきれいな反物がたくさん並んでいます。
別の場所ではスタッフの皆さんが分担で作業しています。あぐらをかいて、足も使って作業します。
和裁士さんの技
着物はすべて手ぬいで完成させます。着物はほとんどが直線ぬいのため基本の運針をいかにまっすぐにぬえるかが重要です。
ここでは山本さんに手ぬいの技術を見せていただきました。
見事にまっすぐな仕上がりです!
和裁士さんの道具
和裁の道具。裁ちばさみ、針、糸きりバサミ。
針も種類があり、長さや太さが違います。細かくぬいたいという場合は短めの針を使います。勢い良くぬいたい時は長い針だそうです。
指貫(ゆびぬき)。牛皮でできています。ぬう時に使います。
針を親指と人差し指で持って針穴の方を指貫にあててぬいます。
糸もたくさんの種類があります。
和裁用電気ごて。こてはアイロンの役目とへらの役目もします。
着物・和裁の歴史
着物は平安時代の人が着ていた衣服「小袖」がはじまりといわれています。それより昔には木の皮や狩りをして手に入れた獣の皮に、首を通す穴をあけて着ていたそうですよ。
もともと着物というのは「着る物」という意味で、幕末に洋服が日本に入ってきて以降、洋服と区別して従来の日本の衣服を和服と呼ぶようになったそうです。
さらに時代がすすみ洋服をみんなが着るようになると、着物の「着る物」という意味は薄れて和服の意味合いがこくなっていったといいます。
和裁という言葉は和服裁縫の略語です。
大正の頃までは裁縫といえば和裁でしたが、洋裁(洋服をぬう事)と区別するために和裁と呼ぶようになりました。
着物の魅力
山本きもの工房 山本さんに着物の魅力を聞きました!
着物は1枚の反物(和服の材料となる織物の事)から出来ていて、糸をほどいて分解しても、それをつなげると一つの反物に戻ります。
その理由は着物の場合は全て直線で裁断し、縫うことによって一枚の着物になっているからなんです。
余分な部分があってもその部分は、ぬい込まれているので、糸をほどくと最初の形と同じままです。それをぬい合わせる事でまた1枚の反物の状態に戻るのです。
そこから色を染め変えたり、羽織に変えたり、コートに変えたり、最後には帯にすることだって出来るんですよ。
それだけ布を有効に使えるという事が和裁の良さ、日本人の知恵の素晴らしさだと思っています。
和裁士さんの魅力
現役の職人さんに仕事の面白さを聞きました!
直接、お客様から依頼をうけて着物を作る場合、そのお客様にお会いしてはじめて物事が動いていく仕事です。
身長、背格好、どういう着かたをするのか、立っている姿を美しく見せたいのか、お茶をやる人など座っている姿を美しく見せたいのかをお客様とのやり取りで判断していきます。
相談を受けて生地や柄を用意するので、生地を作っている作家さんとも自由なつながりを持って、どういう着物を作るのかを考える事はとてもやりがいがあります。
☆山本きもの工房 山本秀司さん
和裁士さんになるには?
和裁学校などで着物や反物の知識や技術を学びます。または、知識が無くても和裁所に直接見習いに入り修行する方法もあります。
修行して1人前になるまでにはおおむね5年かかると言われています。技術を学び、呉服店や仕立て屋に勤務したり個人で仕事を請け負い自宅で和裁を行うこともできますし、和裁教室を開くことも可能です。
もちろん色彩感覚など美的センスも大事な仕事なので感性をみがいていく必要があります。
コツコツできる人、我慢強い人、目の前の仕事を全力でやることが出来る人が向いているといいます。