職人道具紹介
芝山漆器
- 横浜波止場海岸通異人館之図
横浜の開港とともに各地から職人が横浜へ移住し芝山象嵌(下総の国発祥)の技術が横浜へ伝えられました。やがて横浜独自の「芝山漆器」へと発展をとげ、海外へ輸出されました。
輸出中心だったこともあり、国内に現存するものは数少ないといわれています。
当館では所蔵する2つの芝山漆器を公開しています。
- 横浜休日異人遊行乃図
<データ>
材質:檜
形状:印籠型
製造年月:1986年~1987年
昭和61年度(1986年)伝統技能記録保存事業として本会館が製作を委託したものです。
アイロン
- 石炭アイロン
江戸時代中期ごろからこの石炭アイロンが使われはじめました。
鉄の箱の中に石炭を入れて、熱とアイロンの重みで布を伸ばしていくものです。
- ガスアイロン
1850年代に考案されたものです。石炭アイロンの欠点であった灰がでる点が解消されました。
ガスを燃料としてチューブでアイロンにつなぎ、中でガスをもやして 熱をつくりだす構造となっています。
- 電気アイロン
1859年7月1日(安政6年6月2日)の開港から30年近くたった1882年に最初の特許が出されました。
取っ手の後ろにある2本の炭素棒に電流を流すことで発生する熱を利用するものです。
清潔さと手軽に使用できることが評判となり普及しました。
墨壺(スミツボ)
- 墨壺(スミツボ)
墨壺は糸に墨をつけて引っ張り、糸を弾いて木材にまっすぐな線を引く道具です。
昔は木で出来ていて、その飾りに趣向を凝らして大工さんは腕を競っていたとのこと。
匠プラザに展示されている墨壺も、鶴と亀の彫刻が施されています。
その他の七つ道具はその機能を追い求めた形状をしていますが、墨壺だけは工芸品のような美しさがあります。
現代の墨壺は、墨のついた糸を引くという機能は同じですが、
プラスチックで出来ていて、見た目がとてもスタイリッシュ!
さらには墨すら使わずに、レーザーで疑似的に線を引く道具もあります。
もはや墨でも壺でもない墨壺です。
ヨキ
- ヨキ
ヨキはオノの一種なのですが、この臼作り用のものは根元から刃までが異様に長い。
皆さんのイメージするオノとは全然違う形だと思います。
電動工具のない時代、丸太をくり抜いて臼を作るのにはこの長さが適していたようです。
ある特定の職業の、特定の目的に特化した道具というのはとても面白いです。
カンナの刃
- カンナの刃
大工さんのコーナーに並べられているいくつかのカンナの刃のうち、特別大きいものがあります。
通常のカンナの刃幅は大体60~70mm前後なのですが、これは倍以上の144mmもあります。
その表面には「昭和七年壱月初鍛 暁鶏声 石堂輝秀作」と彫ってあります。
石堂は400年続く刀鍛冶で、廃刀令後に道具鍛冶になった名門だそうです。
そこの10代目輝秀が昭和7年1月に作った暁鶏声という名前のカンナ刃、という意味です。
この巨大なカンナを引くにはどれだけの力が必要だったか。
またどれだけの繊細な調整が必要だったか。
そもそもなぜこんな大きなカンナ刃が必要だったのか、どう使っていたのか。
記録が残っていないのでわかりません。
チョウナ
- チョウナ
チョウナは木材の表面を削るための大工道具の一つです。
形状は独特で、柄は急な曲線を描き、その先に刃がついています。
しかしその独特な形から、扱いが非常に難しいです。
新年には色々な行事が行われますが、その一つに「釿始(ちょうなはじめ)」という儀式があります。
儀式ではチョウナを使って模擬的に大工仕事を再現します。
現在では仕事始めに行い、建築関係の一年の無事を祈る儀式ですが、
その昔は家を建てる前の起工式として行われていたそうです。
ビシャン
- ビシャン
建築用の石材や墓石などの石を加工する職人、石工(いしく)の道具です。
その石材を割った表面を平らにしたり、独特な模様をつけたりするのにビシャンを使います。
見た目は柄の先に四角い金属が付いたような形で、
ちょうどお肉を柔らかくするために使う「肉たたき」とそっくりです。
ビシャンで石の表面を何百回何千回と叩く時の音、『チャンチャンチャンチャン…』という音が心地いいです。
ビシャンという名前はこの音から付けられたのだと思いきや、英語の「Bush hammer」が語源だそうです。
エンマ
- エンマ
エンマはヤットコの一種です。
ヤットコとは交差させた金属で物を挟む、いわゆるペンチみたいなものです。
エンマは先端の挟む部分が幅広で、支点に近いため強い力で物を掴むことができます。
大工では釘の頭を掴んで引き抜くために使われていました。
エンマを使用する職種は多岐にわたり、大工のような木材加工の職種の他に彫金、革細工などでも使われています。
「細く小さい物をしっかりと掴む」ということに特化した機能美が素敵です。
名前の由来は、地獄の閻魔(えんま)様が嘘をついた人の舌を引き抜くのに使う道具だからとされています。
ちなみにエンマの先端が刃になっている道具は『喰い切り』と言う恐ろしい名前がついています。
ウチマルカンナ・ソトマルカンナ
- ウチマルカンナ・ソトマルカンナ
木工に使うカンナの種類で、漢字で書くと内丸・外丸となります。
会館には桶の職人が使用していたものが展示されています。
桶の内側・外側にカンナをかけるため、刃の当たる面が内側に丸く、外側に丸くなっています。
この呼び名がなかなかややこしいのです。
ウチマルカンナは、桶の外側を削るために内側にへこんでいます。
ソトマルカンナは、桶の内側を削るために外側に丸くなっています。
桶の外側を削るからソトマル、内側を削るからウチマルと言いたい所ですが、それは逆。
ソトマルの見た目がいくらウチマルっぽくても逆なのです。
顔面マッサージのコンプレッサー
- 顔面マッサージのコンプレッサー
理美容師の道具なのですが、何に使うものか見ただけではわかりませんでした。
ペンチの先端に金属製の筒がついていて、握ると先端の筒が何かを吸い取る動きをします。
一見手術で使うかのような物々しい器具。
普段髪を切るとき、この様な道具を使われたことありません。
そこで収蔵品の台帳を確認したところ、「顔面マッサージのコンプレッサー」とありました。
別名「カップス」とも。用途は「小鼻・目の周囲に使う(美顔用)」。
美容の道具だったようです。
美顔カップスでネット検索すると、なんとなく見たことのある口の広いスポイトが出てきます。
コビキノコ
- コビキノコ
匠プラザで一番目立つこの道具はノコギリの一種で、
丸太を縦に切って板材を作るのに使用していました。
その板材を作る仕事を「木挽き」と呼んでいたそうです。
刃の部分が幅広く、ずんぐりしたクジラを思わせるシルエットがかわいいですが、
一人で持つ道具としてはかなり大型のものです。
今では機械化によって、手で板材を切り出すこの道具が使われることもなくなりました。
ダルマアメ包装紙
- ダルマアメ包装紙
ダルマの形をした棒付きの飴を包むのに使用していたようです。
戦前戦中まで使用していたものが大量に収蔵されていました。
縦12センチ程度の薄い一枚の紙に、
赤で上下の縁取り、中央にダルマの絵と「ダルマ」の文字があります。
このだるまさんがなかなか味のある表情をしています。
何か言いたいことがあるような顔です。
ノミ
- ノミ
木を加工する道具で一番種類が多いと言われているのが「ノミ(鑿)」です。
木工でのノミは木に穴をあけたり、溝を彫ったり細かい彫刻をしたりと多様な使い方をします。
その分種類も豊富で、大きいもの小さいもの、刃が広いもの細いものなど数百種類あるようです。
会館の収蔵品約3,500点の中でもノミが一番多く、約400点ほどあります。
匠プラザでもたくさんのノミを展示していますが、全部は展示しきれていません。
中にはどう使っていたのか想像がつかないノミもあります。
本当に多種多様のノミがありますので、匠プラザでその種類の多さをご覧ください。
鋳物尺(いものじゃく)
- 鋳物尺(いものじゃく)
匠プラザの木型職人道具のコーナーに定規がたくさん並んでいます。
同じものばかり展示しなくてもいいのに、と思うかもしれませんが、全部違うものです。
この定規は鋳物尺と言って、金属の鋳物の原型を作るときに使う定規です。
金属は固まるときに収縮するので、その縮み幅を考えて原型を大きめに作らなければなりません。
その縮み幅の分、あらかじめ少し長くしてあるのがこの鋳物尺です。
金属の種類によって縮み幅が違うので、それぞれの金属の種類にあった鋳物尺があります。
その種類は10/1000や22/1000と表記されていて、
1000mmの定規が実際は1010mmや1022mmで作られています。
途中で別の種類の鋳物尺と取り違えてしまうと大変なことになります。
順次、特選品を公開して参ります。