【ハマの職人 第9号】 ~この横浜に継承したい技の話~

公開日 2019/01/08

 

 

<和裁師>加藤 憲一氏 横浜和裁専門学院 山本和裁研究所 代表取締役

 

<創業歴史> 

明治36年横浜市中区に初代、山本 勘四郎氏が山本和裁所を創立。 
昭和62年横浜市港南区に新設移転 横浜和裁専門学院設立。 
平成17年加藤 憲一が株式会社山本和裁研究所代表となる。 

 


 
<ものづくりを支える職人アイテム> 

<和裁師の業と技> 


横浜市洋光台にある山本和裁研究所を訪れました。 
着物は日本の伝統的な衣装であり、お正月や結婚式、成人式、七五三などおめでたい席には 
華があるけれど、慎ましやかで目をひく美しい姿は注目の的です。 
考えてみれば、洋服を自分で作る人はいるけれど、着物を趣味で作る人の話はあまりききません。 
着物に興味のある私は、和裁の世界ってどんなところだろうとわくわくしながら出かけました。 
未知の世界を知る面白さがありましたが、山本和裁研究所のホームページに書かれていた 
「輸入品に頼ることにより、日本で培われた伝統が近い将来には失われてしまうことも考えられます」 
の意味を考えさせられる取材となりました。 
 
取材をした加藤氏は5代目です。 
学生時代の20歳の時に、和裁所を継ぐことを決意され、修行の道に入ったそうです。 
親から和裁士になるように強要されることなく、景気が良かった当時は仕事がたくさんあり 
家族の姿を見て、自ら志願したそうです。 
加藤氏は和裁士には根気が必要とお話されました。 
修行時代は1番上手な人を目指して修行を積み重ねていったそうです。 
修行は5年間和裁所に通い、最初の1ヶ月はひたすら運針(まっすぐ縫う)だけを行います。 
縫い目が揃ってきたら、少しずつ縫わせてもらい、ようやく浴衣を仕立てるのだそう。 
丁寧かつ細心の注意が必要な仕事なので一人前になるまで厳しく教わりながら経験を積むのだと想像します。 
昔は「1日1枚着物を仕立てる」と言われていたというお話には驚きでした。 
今は3~4日で1枚仕立てるのだそうですが、それでも私はプロの仕事の速さに驚きでした。 
作業場所を見せていただきましたが、これから仕立てていくお客さまの反物が想像以上にずらりと並んでいました。 
和裁士は高価なものをじっくり扱う仕事と思っていましたが、目の前の反物を 
スピーディーに形にしていく早業と正確で美しく仕上げる卓越した職人技が必要なのだと初めて知りました。 
 

 

<着物の伝承と後進の育成>

 
和裁業界は今後どうなってほしいか伺ったところ 
「後継者を、和裁士を育てていかなければいけない」という答えでした。 
和裁士が高齢化しているのと、多くをアジアで縫製をしている現状があるそうです。 
ひと昔と比べて、若い人が希望して和裁士の修行に入ることが少ないとのこと。 
生活スタイルが変化した今、若いときから着物に触れる機会がありませんので 
和裁士という仕事に関心を持つこと自体、難しいことは納得です。 
加えて、「針仕事は昔の女性の仕事」、「針仕事は趣味」という考えが強いのではないでしょうか。 
着物は伝統衣装で海外からも評価されているものなのに、 
それについて知る機会や直接的な経験が少なく、和裁士が減っているのは残念です。 
世界の式典などでは日本の代表として着物を着る人を多く目にしますし、 
オリンピックでは着物は伝統美として、夢のある存在になることと思います。 
世界を舞台に活躍したいと考える多くの若い人達から 
「着物を縫うことを仕事にしたい!」と軽やかに手をあげる人が増えれば 
未来は変わるのではないかと感じました。 
 
和裁組合の皆さまには、毎年開催している、会館一大イベントの小学生向けの「匠の小学校」で 
小学生向けにお手玉人形づくりの教室を開催いただいたり、技文市での販売にも協力をいただいています。 
今後も日本ならではの美しい手しごとを広め、盛り上げていただきたいです。 
 
取材日:2018年12月17日 
職人名 加藤 憲一氏 
HPアドレス 横浜和裁専門学院 山本和裁研究所 
 http://yamamotowasai.com/index.html